業界動向

ゴルフ旅行の経済効果とは?|地域への影響と測り方

ゴルフツーリズムの経済効果とは、ゴルフを目的に移動した旅行者のプレー、宿泊、飲食、交通などの支出が、地域の売上・雇用・賃金・税収へ広がる影響です。測定では、ゴルフ場の売上、市場規模、旅行者の直接支出、間接・誘発効果を混ぜず、対象地域に実際に残る金額を分けます。

ゴルフ旅行者がゴルフ場と宿泊・飲食・交通を利用する地域観光の風景 Photo by Chris L on Pexels

はじめに

ゴルフツーリズムの経済効果を説明するとき、最初に大きな世界市場予測を置く必要はありません。地域外から誰が来て、何泊し、何ラウンド回り、地域内で何に支払ったかを定義する方が先です。ゴルフ産業全体との関係は、親記事のゴルフビジネスと業界動向で俯瞰できます。

世界の旅行商品取扱高や日本全国のゴルフ場売上は、市町村に残った所得・税収を直接示しません。本記事はMyrtle Beachの2024年実測例を基準に、日本の自治体・DMO・ゴルフ場向けの測定設計へ落とし込みます。

ゴルフツーリズムの経済効果とは

ゴルフツーリズムの経済効果は、ゴルフツーリズムによって新たに生じた地域内の売上、雇用、所得、税収を表します。旅行者が支払ったプレー料金だけではなく、前泊・後泊、飲食、地域交通、買物、娯楽までが直接支出の候補です。一方、日常的な近隣利用や旅行と無関係な用品購入は、同じ集計へ自動的には入りません。

ここで区別したい数字は3種類です。

  • 市場規模:企業や事業者の売上を一定範囲で合計した数字です。
  • 旅行者の直接支出:対象地域で旅行者が最初に支払った金額です。
  • 総経済効果:直接効果に間接効果と誘発効果を加えた数字です。

集計範囲を決める確認項目

旅行目的との関係を先に判定すると、旅行需要と日常需要を混ぜずに済みます。

  • ゴルフ練習場:旅行中の利用分だけを対象にします。
  • インドアゴルフ:旅程に含む娯楽分を分けます。
  • ゴルフ会員権の預託金:通常は旅行支出から除きます。
  • ゴルフ場の事業価値評価:観光消費とは別の資産評価です。
  • コースレーティング:目的地選択への影響を確認します。
  • ゴルフ統計:人・回数・売上の分母を明記します。
  • 18ホールラウンド:1回の定義を統一します。
  • 9ホールラウンド:18ホール換算の有無を示します。
  • ゴルフスクール:旅行商品に含む受講だけを数えます。
  • ゴルフコミュニティ:再訪施策と日常参加を分けます。
  • 女性のゴルフ参加:市場要因と旅行成果を混同しません。

ゴルフ市場には旅行以外の需要も含まれます。ゴルフ人口は参加した人の推計であり、ゴルフ用品市場はクラブやボールなどの販売を扱うため、どれも地域の旅行者支出とは分母が違います。

国際流通の規模を示す補助線がIAGTOです。同団体は1997年設立で、93カ国の2570会員を擁し、その中核には65カ国の専門ゴルフツアーオペレーター786社が含まれます。会員オペレーターは世界のゴルフ旅行パッケージ販売の90%超を担い、年間取扱高は25億ユーロ超です。

ただし、この25億ユーロは地域の税収ではありません。旅行商品が国際的に流通する規模を示しても、手数料、域外交通、地域内調達を分けなければ、目的地に残る所得は分かりません。IAGTOのPeter Walton氏は、団体の役割を「会員がより速く事業を発展させられるよう、情報を提供し機会を創出すること」(原文英語)と説明しています。販売機会を作る仕組みと、売上を地域へ残す仕組みは別々に評価します。

ゴルフツーリズムの経済効果はどこへ波及するか

旅行者支出は、ゴルフツーリズムの経済効果が地域へ入る最初の入口です。グリーンフィー、宿泊、飲食、レンタカー、買物、温泉や観光体験へ支払われると、ゴルフ場以外の事業者にも需要が広がります。ゴルフ場送迎サービスやゴルフバッグ輸送を地域事業者が担う場合も、費目と帰属先を集計前に固定します。

波及先は売上だけではありません。宿泊施設が地元の食材を仕入れ、キャディや送迎運転手を雇い、ゴルフカートの整備を地域業者へ頼めば、地域内の取引とゴルフ業界の仕事が増えます。従業員が得た所得を地域で使えば、さらに家計消費が生まれます。地方税は、この連鎖が自治体財政へ現れる一つの結果です。

支出の帰属先を確認する項目

旅行者が払った総額ではなく、誰が収益を受け取るかで域内・域外を分けます。

  • ゴルフ旅行予算:1旅行の総支出を費目へ分解します。
  • 空港宅配:目的地側の売上か確認します。
  • 航空預け入れ手荷物:航空会社への支払いを分けます。
  • ゴルフバッグ航空輸送:域外交通分を識別します。
  • レンタルクラブ:地域施設の収益なら直接効果です。
  • 車なし旅行:鉄道と二次交通の帰属先を分けます。
  • 旅行保険:保険料は地域外支出になり得ます。
  • 海外ゴルフ旅行保険:補償と地域消費を分けます。
  • 予約確認書:予約数と来訪実績を照合します。
  • ツアー取消条件:取消料の帰属を確認します。
  • 旅行契約:パッケージ代金の内訳を確認します。
flowchart TD
  A[旅行者の直接支出] --> B[ゴルフ場・宿泊・飲食・交通]
  B --> C[地域内の仕入れ]
  B --> D[雇用と賃金]
  C --> E[間接効果]
  D --> F[家計消費による誘発効果]
  B --> G[州・地方税]
  B --> H[域外への漏出]

旅行者の支出は地域内の仕入れと雇用へ波及しますが、域外仕入れや送金は地域外へ漏出します。

雇用は常勤、短時間、季節、外部委託を分け、常勤換算と賃金・福利厚生を併記します。外注報酬が域外へ流れる分は、地域所得に含めません。

直接・間接・誘発効果を分ける

経済波及倍率は、直接支出が地域内の仕入れと家計消費を通じて、どれだけ大きな総効果へ広がるかを示します。直接効果、間接効果、誘発効果を順番に分けると、数字の重複と過大評価を防げます。

直接効果は、旅行者が対象地域の事業者へ最初に支払った金額です。プレー、宿泊、飲食、地域交通、娯楽、買物を費目別に集め、事前決済分も帰属先を確認します。

間接効果は、直接需要を受けた事業者による地域内仕入れです。ホテルの地元食材やゴルフ場の地域内設備点検が該当し、地域外の食材・資材は含めません。

誘発効果は、直接・間接効果で生じた雇用者所得が地域内の家計消費へ回ることで生じる需要です。地域外で使う分は漏出するため、全国平均の倍率を一地域へそのまま当てません。

重要な計算ルールは一つです。総経済効果に直接効果が含まれる定義なら、直接支出をもう一度足しません。たとえば直接支出7億500万ドル超と総効果16億ドルを足して「23億500万ドル超」と表現すると、直接効果を二重計上します。

Myrtle Beachの2024年実測事例

Myrtle Beachの2024年調査は、ゴルフ場の事業データと旅行者データを接続し、人、ラウンド、直接支出、総効果、雇用、税収を別々に示した事例です。対象地域はSouth Carolina州のHorry郡・Georgetown郡からNorth Carolina州のBrunswick郡へ広がり、行政境界をまたぐ実際のゴルフ市場として定義されています。

Myrtle Beach Area CVBの公表資料では、2024年に50マイル超を移動してプレーしたゴルファーは推計759000人で、最大140万ラウンドを回りました。1人が複数回プレーするため、旅行者数とゴルフ場延べ利用者数は一致しません。この定義があるからこそ、近隣の日常利用と旅行需要を分けられます。

旅行者の宿泊・飲食・交通・娯楽への支出は7億500万ドルを超え、観光関連雇用7300人超を支えました。市場全体の総効果は16億ドルで、雇用13340人、賃金・福利厚生4億8290万ドル、州・地方税1億3480万ドルです。

指標2024年の値分母・読み方
50マイル超を移動したゴルファー推計759000人重複を除いた旅行者の推計
旅行者のラウンド最大140万ラウンド同じ旅行者の複数プレーを含む
旅行者の地域内直接支出7億500万ドル超宿泊・飲食・交通・娯楽など
旅行関連雇用7300人超旅行者支出が支えた雇用
市場全体の総経済効果16億ドル直接・間接・誘発を含む
市場全体の雇用13340人対象市場全体が支えた雇用
賃金・福利厚生4億8290万ドル雇用所得に関する指標
州・地方税1億3480万ドル自治体財政への効果

対象地域では、2024年末に63の公共施設で78コース、私設クラブ6、合計69施設が稼働し、さらにオフコース施設が10ありました。施設数、コース数、ラウンド数を分けているため、1施設に複数コースがある市場構造も読み違えません。

調査はNational Golf Foundation、Golf Tourism Solutions、Myrtle Beach Area Golf Course Owners Association、South Carolina Department of Parks, Recreation, and Tourismの協働です。ラウンド、売上・費用、ゴルフ場の設備投資、雇用・人員配置、観光データを使いました。Tracy Conner氏は「ゴルフはほぼ100年にわたり、Myrtle Beach地域を差別化し、発展させ、多様化してきました」(原文英語)と述べています

この事例から借りるのは倍率ではなく、距離条件を決め、人とラウンドを分け、コース外支出を事業データ・雇用・税収へ接続する測定順序です。

日本でゴルフツーリズムの経済効果を測る方法

訪日ゴルフツーリズムを含むゴルフツーリズムの経済効果は、全国のゴルフ場市場から自動的には切り出せません。帝国データバンクの調査では、2024年度の国内ゴルフ場市場は事業者売上高ベースで8100億円、前年度比3.0%増、4年連続の増加でした。しかし、この増加には訪日客の回復だけでなく、既存客の復帰、若年層・女性の定着、プレー料金の値上げが含まれます。

同調査では増収企業が39.8%、前年並みが34.1%で、赤字企業は24.7%でした。赤字割合は2020年度の47.5%より低い一方、人件費、エネルギー、資材のコスト増も報告されています。つまり、8100億円はゴルフ産業の事業環境を読む数字であって、「訪日ゴルフ旅行が地域へもたらした所得」ではありません。市場規模の分母を詳しく比べる場合は、日本のゴルフ人口と産業の読み方も参照してください。

旅行者側の基礎資料は観光庁のインバウンド消費動向調査です。個票データにはクリーニング済みの個々人の回答が入り、2026年7月15日時点で2024年4-6月期から2026年1-3月期までが提供されています。地域、旅行目的、費目別支出、宿泊などを分析できるため、ゴルフ場予約とティータイムの匿名集計を同じ期間で照合する土台になります。

この照合では、ゴルフ参加人口の定義を旅行者数へ流用しません。参加経験の有無ではなく、居住地、移動、宿泊、旅行目的によって対象者を決めます。

日本政府観光局の資料では、2025年の訪日外国人旅行者数は4268万人で、2024年2月から2025年12月まで23カ月連続で各月の過去最高を更新しました。2026年1〜3月の訪日外国人旅行消費額は2兆3378億円で、前年同期比2.5%増です。一方、地方宿泊比率はおおむね30%前後で推移しています。

全国需要の拡大を地域の成果へ読み替えないことが重要です。同局は「日本全体の伸びと、自地域や事業者の成果は別物です」と明記しています。全国の2兆3378億円を、地方のゴルフ施策の成果として配分することはできません。予約元、居住国、旅行目的、宿泊、地域内消費までつながった分だけを地域の実績にします。

測定は次の順で設計すると整理できます。

  1. 地域境界を決める:市町村、観光圏、通勤圏など、どこまでを域内とするか固定します。
  2. 旅行者を定義する:居住地、移動距離、宿泊、旅行目的の条件を決めます。
  3. 人と延べ数を分ける:旅行者、ラウンド、宿泊延べ数を別々に数えます。
  4. 費目別支出を集める:プレー、宿泊、飲食、交通、買物、娯楽を分けます。
  5. 事業データへ接続する:売上、仕入れ、雇用、賃金、設備投資を同じ期間で集計します。
  6. 漏出と公費を確認する:域外仕入れ、手数料、補助金、送迎費などを分けます。
  7. 税収と再訪を追う:単年度の誘客だけでなく、再訪と財政効果を継続して測ります。

予約データを分ける補助項目

商品形態を分けると、誰が地域へ来たかを予約台帳から追いやすくなります。

  • ゴルフの一人予約:個人客と団体客を分けます。
  • 最少催行人数:未催行の申込を除きます。
  • レンタル範囲:用品費の内訳をそろえます。
  • 二泊二ラウンド日程:泊数とラウンドを別計上します。
  • アジアゴルフ旅行先:訪問市場別に比較します。
  • ゴルフ旅行遅延対策:未消化予約を識別します。
  • ゴルフ場のドレスコード:受入案内の改善指標にします。
  • シニア向けゴルフ場:年齢別需要を分けます。
  • シニア向けラウンドホール数:短縮利用を分けます。
  • 関西のゴルフ場:地域比較の境界を固定します。
  • 車なし北海道ゴルフ旅行:交通制約別に追います。

個人情報や共通IDを共有せず、期間・地域区分・旅行者定義をそろえた匿名集計で、予約、宿泊、消費を接続します。

経済効果を過大評価する4つの落とし穴

観光収入の漏出を無視すると、旅行者が支払った金額をそのまま地域所得として扱ってしまいます。経済効果を過大評価する典型例は、追加性、分母、漏出、公費の4点を確認しないことです。

施策がなかった場合の基準線を置かない

追加性は、施策がなければ発生しなかった需要だけを成果とします。前年同月、曜日、天候、既存予約を基準に、通常予約の置き換えを除きます。

人・ラウンド・宿泊を一つの利用者数にする

1人が3ラウンドし2泊した場合も、旅行者1人、ラウンド3、宿泊延べ数2を別々に記録します。足し合わせると、各単位の消費額を再現できません。

域外への支払いを引かない

予約手数料、域外本社への送金、地域外仕入れ、長距離交通の域外帰属分は地域内に残りません。地域内の飲食、送迎、食材調達は残る割合を高めますが、供給量・品質・安全性を満たせない場合まで域内へ限定せず、資金の流れを開示します。

売上だけを示し、公費と持続可能性を外す

誘客広告、送迎補助、造成、維持管理、人員増の費用を示さずに売上だけを並べると、施策の採算は判断できません。ゴルフ場経営の費用に加え、ゴルフ場の水管理、エネルギー、廃棄物、住民生活への影響も同じ期間で確認します。詳しい費用構造はゴルフ場経営の現状と重なりますが、地域評価ではさらに公費と地域外部への影響を加えます。

費用・財政・継続性の確認項目

売上と同じ期間で費用と負荷を追うと、純効果を説明しやすくなります。

  • コース管理:維持管理費と雇用を分けます。
  • サステナブルゴルフ:環境と地域便益を併記します。
  • 循環型経済:地域内の資源循環を確認します。
  • ゴルフ場利用税の軽減税率:税収推計へ反映します。
  • シニアゴルフ場利用税免除:非課税分を除きます。
  • 非課税申告書:実績確認の資料にします。
  • プレーのペース:受入枠と満足度を併記します。
  • 女性ゴルファー:新規層と旅行者を分けます。
  • ゴルフ場のエネルギー管理:光熱費と負荷を追います。
  • ゴルフ場の廃棄物管理:処理費と削減効果を追います。
  • ゴルフサークル:地域の日常利用を旅行需要から除きます。

経済波及倍率は地域境界、産業連関表、域内調達率で変わります。他地域から借りず、直接支出、漏出、雇用、税収、公費の計算過程を公開します。

地域が追うべきKPIと判断基準

ゴルフ旅行の地域KPIは、予約から再訪まで期間と旅行者定義をそろえます。支出、地域内調達、雇用、賃金、税収、公費まで接続できた段階で経済効果として報告します。

段階KPI分母・データ源過大評価防止チェック
誘客域外旅行者数、予約転換率居住地・旅行目的・予約経路通常予約の置き換えを除く
プレーラウンド数、1人当たりラウンドゴルフ場予約・実績人数と延べ利用を分ける
滞在宿泊者数、平均泊数宿泊施設・旅行者調査対象地域外の宿泊を除く
消費1人1旅行当たり域内消費費目別アンケート・決済集計域外交通と手数料を分ける
調達域内調達率事業者の仕入れ集計域外仕入れを間接効果に入れない
雇用常勤換算雇用、賃金・福利厚生雇用・人員配置データ季節雇用と外部委託を分ける
財政州・地方税、補助金、事業費税務・事業会計税収だけでなく公費も示す
継続再訪率、再予約単価匿名化した年度比較新規客と既存客を分ける

もし3点だけ覚えるなら、第一に、市場規模と地域経済効果を分けること。第二に、旅行者・ラウンド・宿泊を別々に数えること。第三に、直接支出から漏出と公費を確認し、雇用・賃金・税収まで追うことです。

日本ではゴルフ場利用税を含む税収も、対象地域・課税主体・期間をそろえて扱います。税額だけを成果にせず、誘客事業費や減免、行政コストと並べることで純効果を判断できます。

3点がそろわない段階では「経済効果」ではなく「誘客実績」または「旅行者支出」と表現する方が正確です。旅行商品そのものを見直す場合は、ゴルフ旅行完全ガイドで予約、移動、宿泊、予算の接点を確認できます。測定できる商品は、改善もしやすくなります。

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