ストロークス・ゲインドの理解:ゴルフ統計の革命
ゴルフの上達を目指すなら、自分のプレーを正確に分析することが不可欠です。従来のスコアやパット数だけでは見えてこなかった課題を、ストロークス・ゲインド(Strokes Gained)という革命的な指標が明らかにします。本記事では、この画期的な分析手法について、その仕組みから実践的な活用方法まで詳しく解説します。
ストロークス・ゲインドとは何か

ストロークス・ゲインド(SG)は、[コロンビア大学のマーク・ブローディ教授](https://www.mamejiten.com/golf/diary/G/242.html)によって開発された、ゴルフのパフォーマンスを測定する革命的な統計指標です。この指標は、各ショットの価値を数値化し、プレーヤーの実力を客観的に評価することを可能にしました。
従来のゴルフ統計では、フェアウェイキープ率やパット数、パーオン率といった単純な数値が使われてきました。しかし、これらの指標には大きな問題がありました。例えば、200ヤードのアプローチショットでグリーンを外した場合と、10ヤードのアプローチでグリーンを外した場合、パーオン率という指標では両方とも「失敗」として同じ扱いになってしまいます。
ストロークス・ゲインドは、このような従来の統計の限界を克服します。[各ショットの前後の状況を詳細に分析](https://drive4show.org/strokes-gained/)し、そのショットによってどれだけ打数を「得した」か、あるいは「損した」かを正確に数値化するのです。
2011年からPGAツアーで公式に採用されて以来、この指標はプロゴルフ界の戦略を大きく変え、今ではアマチュアゴルファーも活用できる時代になりました。ゴルフ上達分析の手法として、データに基づいた効率的な練習計画を立てることができます。
ストロークス・ゲインドの計算方法

ストロークス・ゲインドの計算は、膨大なデータベースに基づいています。PGAツアーやアマチュアゴルファーから収集された数百万ショットのデータから、あらゆる状況における「平均的な残り打数」が算出されています。
具体的な計算式は以下の通りです:
ストロークス・ゲインド = ショット前の残り打数 - (ショット後の残り打数 + 1)
例えば、フェアウェイの150ヤード地点からのショットを考えてみましょう。統計データによれば、この位置からホールアウトまでの平均打数が2.8打だとします。あなたがこの位置からグリーン上3メートルに乗せたとしましょう。3メートルのパットからの平均打数は1.5打です。
このショットのストロークス・ゲインドは: 2.8(ショット前)- (1.5(ショット後)+ 1(今のショット)) = +0.3
つまり、このショットで平均より0.3打「得した」ことになります。逆に、同じ位置からバンカーに入れてしまった場合は、マイナスの値になります。
この計算をラウンド中のすべてのショットで行い、合計することで、プレーヤーの総合的なパフォーマンスが数値化されます。
4つの主要カテゴリー

ストロークス・ゲインドは、ゴルフのスキルを4つの主要カテゴリーに分類して分析します。この分類により、自分の強みと弱点を明確に把握することができます。
SG: ティーショット(Off the Tee)
ドライバーショットやパー3のティーショットのパフォーマンスを測定します。飛距離だけでなく、方向性も含めた総合的な評価が行われます。プロの平均は約+0.3前後で、飛ばし屋として知られるブライソン・デシャンボーは+1.0以上を記録することもあります。
SG: アプローチ(Approach the Green)
グリーンまで30ヤード以上の距離から打つアイアンショットやフェアウェイウッドのパフォーマンスを評価します。研究により、このカテゴリーがスコアに最も大きな影響を与えることが判明しており、プロとアマチュアの差が最も顕著に現れる部分でもあります。
SG: アラウンド・ザ・グリーン(Around the Green)
グリーン周り30ヤード以内からのウェッジショットやチップショットを測定します。いわゆる「寄せワン」の能力を数値化するカテゴリーです。このスキルはスコアメイクにおいて非常に重要です。
SG: パッティング(Putting)
グリーン上でのパットのパフォーマンスを評価します。興味深いことに、ブローディ教授の研究により、従来信じられていた「パットイズマネー」の考え方が見直されることになりました。実際には、パッティングよりもアプローチショットの方がスコアへの影響が大きいことが明らかになったのです。
| カテゴリー | 測定範囲 | プロ平均 | アマチュアとの差 |
|---|---|---|---|
| SG: ティーショット | ティーイングエリアから | +0.3 | 小さい |
| SG: アプローチ | 30ヤード以上 | +0.8 | 非常に大きい |
| SG: アラウンド | 30ヤード以内 | +0.4 | 中程度 |
| SG: パッティング | グリーン上 | +0.4 | 小さい |
プロとアマチュアの違い

ストロークス・ゲインド分析により、プロとアマチュアゴルファーの実力差がどこにあるのかが科学的に明らかになりました。[実践的な分析](https://practical-golf.com/pros-vs-joes)によると、最も大きな差が生まれるのはアプローチショットです。
例えば、150ヤードのアプローチショットにおいて、PGAツアープロの平均は約6メートル以内にピンに寄せます。一方、平均的なアマチュアゴルファー(ハンディキャップ10-15)の場合は、同じ距離から15メートル以上離れた位置に落とすことが多いのです。
この差は単に技術力だけでなく、クラブ選択や風の読み、ライの判断といった総合的な能力の差を反映しています。興味深いのは、パッティングにおけるプロとアマチュアの差は思ったほど大きくないという点です。3メートルのパットの成功率は、プロが約50%に対し、シングルハンディキャップのアマチュアでも40%程度を記録します。
一方、ティーショットに関しても、飛距離の差はあるものの、スコアへの影響という点では中程度です。むしろ重要なのは、コースマネジメントの観点から、いかにトラブルを避け、次のショットを打ちやすい位置に運ぶかという戦略性です。
データを活用した練習方法

ストロークス・ゲインドの真価は、データに基づいた効率的な練習計画を立てられる点にあります。従来の感覚的な練習から脱却し、科学的なアプローチで上達を目指すことができるのです。
まず、自分のSGデータを確認し、どのカテゴリーがマイナスになっているかを特定します。多くのアマチュアゴルファーは、SG: アプローチが最も大きなマイナスになっていることに気づくでしょう。この場合、練習時間の多くをアプローチショットに割り当てるべきです。
具体的な練習方法としては、様々な距離からのアプローチショットを反復し、各距離での自分の平均的な結果を記録していきます。例えば、100ヤードから10球打ち、平均的にピンから何メートルに寄せられるかを測定します。これを継続的に行い、自分の基準値を確立し、それを改善していくのです。
また、ゴルフフィットネスと組み合わせることで、身体的な制約を克服し、より安定したショットを打てるようになります。特にアプローチショットでは、体の軸の安定性が重要です。
練習場でのデータ収集には、Shot ScopeやArccosといったGPSウォッチやセンサーを活用することをお勧めします。これらのデバイスは、自動的にすべてのショットを記録し、ストロークス・ゲインドを計算してくれます。
テクノロジーの活用
現代のゴルファーは、プロと同じレベルのデータ分析ツールを利用できるようになりました。主要なテクノロジーとその特徴を紹介します。
GPS搭載デバイス
Shot Scope V3/X5: 手首に装着するだけで、すべてのショットを自動記録します。ラウンド後、スマートフォンアプリで詳細なストロークス・ゲインド分析を確認できます。特に、コース上のどの距離帯が苦手かを視覚的に把握できる機能が優れています。
Arccos Caddie: クラブのグリップエンドに装着する小型センサーで、各クラブの使用状況とパフォーマンスを追跡します。AIによるコース戦略のアドバイス機能も搭載されており、実際のプレー中に最適なクラブ選択を提案してくれます。
Garmin Approach: 高精度GPSと組み合わせることで、正確な距離測定とデータ記録が可能です。風速計測機能も備えており、より詳細な分析ができます。
ローンチモニター
TrackManやFlightScopeといったローンチモニターは、ボールの初速、打ち出し角、スピン量など、より詳細なデータを提供します。練習場での使用により、スイング改善に直接つながる具体的なフィードバックを得られます。
これらのテクノロジーを活用することで、プロと同じような科学的アプローチでゴルフに取り組むことができるのです。
「パットイズマネー」神話の崩壊
ストロークス・ゲインド分析がもたらした最も衝撃的な発見の一つが、長年信じられてきた「パットイズマネー(パッティングこそがスコアを決める)」という考え方の見直しでした。
[マーク・ブローディ教授の研究](https://collegeofgolf.keiseruniversity.edu/the-strokes-gained-statistics-are-explained/)により、パッティングがスコアに与える影響は、従来考えられていたよりもはるかに小さいことが明らかになりました。実際、PGAツアープロの間でも、パッティングの良し悪しによるスコア差は1ラウンドあたり約2打程度です。
一方、アプローチショットの良し悪しは、1ラウンドで4-5打もの差を生み出します。これは、グリーンに近づけば近づくほど、次のショットの難易度が劇的に下がるためです。3メートルのパットと10メートルのパットでは、成功率に大きな差があります。したがって、アプローチで3メートルに寄せられるかどうかが、最終的なスコアに大きく影響するのです。
この発見は、練習の優先順位を大きく変えました。多くのアマチュアゴルファーは、パッティング練習に多くの時間を費やしていましたが、実際にはアプローチショットの精度向上に注力すべきだったのです。
ただし、これはパッティングが重要ではないという意味ではありません。トップレベルの競技では、わずか1打の差が勝敗を分けます。しかし、一般的なゴルファーが上達を目指す場合、限られた練習時間をどこに投資すべきかという観点では、アプローチショットを優先すべきだということです。
ストロークス・ゲインドを使った戦略立案
ストロークス・ゲインドのデータは、ラウンド中の戦略決定にも活用できます。自分の強みと弱みを理解することで、リスクとリターンのバランスを最適化できるのです。
例えば、あなたのSGデータが「ティーショット:+0.5、アプローチ:-1.2、アラウンド:+0.3、パッティング:-0.1」という結果だったとします。この場合、アプローチショットが最大の弱点であることが明確です。
このデータを踏まえると、ラウンド戦略として以下のような判断ができます:
ティーショット: 比較的得意なので、積極的にドライバーを使って距離を稼ぐ。ただし、極端に狭いホールや、トラブルのリスクが高い場合は慎重に。
セカンドショット: アプローチが苦手なので、確実にグリーンに乗せることを最優先に。ピンを狙うよりも、グリーンの広い部分を狙う保守的な戦略が有効。
アプローチ: 苦手を自覚しているので、できるだけグリーン周りからのショットを避ける。つまり、前のショットでグリーンオンを狙う判断がより重要になる。
グリーン周り: 比較的得意なので、多少グリーンを外してもリカバリーできる自信を持てる。
このように、データに基づいた戦略を立てることで、自分の実力を最大限に活かしたコースマネジメントが可能になります。また、メンタル面でも、自分の能力を客観的に理解していることで、無理な攻めを避け、冷静な判断ができるようになります。
まとめ:データ活用で確実な上達を
ストロークス・ゲインドは、単なる統計指標ではありません。これは、ゴルフの上達において「何を」「どのように」練習すべきかを科学的に示してくれる羅針盤なのです。
従来の感覚的な練習から脱却し、データに基づいたアプローチを取り入れることで、限られた時間の中で最大限の効果を得られます。特に、アプローチショットの重要性を理解し、そこに練習時間を集中させることが、多くのアマチュアゴルファーにとって最も効率的な上達法となるでしょう。
現代のテクノロジーを活用すれば、プロと同じレベルのデータ分析が可能です。Shot ScopeやArccosといったデバイスに投資し、自分のプレーを客観的に分析することから始めてみてください。
そして何より重要なのは、データを見て満足するのではなく、そこから得られた洞察を実際の練習とプレーに活かすことです。自分の弱点を正確に把握し、それを改善するための具体的な行動を取る。このサイクルを繰り返すことで、確実にスコアは向上していきます。
ストロークス・ゲインドという革命的なツールを味方につけて、データに基づいた科学的なゴルフ上達の旅を始めましょう。






